質問者: ***** さん
はじめまして。
内容が対象外なのかもしれませんが真剣に悩んでますので回答をいただけたら幸いです。
私は現在37歳で公務員をしておりますが、人生を考えるにあたり、専門的な仕事がしたいと思い、歯学部受験を検討しています。15年間働いてきました。
高齢での歯学部入学の場合、卒後(就職時)、デメリットなどございますでしょうか?
開業は特に考えておりません。
学費の面もクリアしております。
実際に現場に携わっておられる関係者の方々へお聞きする機会がないため、この場を借りて質問する運びとなりましたが、よろしくご回答御願いいたします。
回答者:マツモト歯科医院(大田区・千鳥)の松本です。
***** さん こんにちは
わたくしは遠回りして歯医者になった一人ですが、 ***** さんのご質問に関しての直接のお答えは他の先生方がされていますので、私は別の観点から考えを述べさせていただきます。
>人生を考えるにあたり、専門的な仕事がしたい
***** さんは、どんな気持ちを満足させたくて、歯科医師という職業を選んでいるのでしょうか?
「専門的な仕事がしたい」
というのはどんな気持ちなのでしょうか。
***** さんの歯科医師に対するイメージは、「特別な資格を持っている人間にしかできないことをやって、人から高く評価され、喜ばれ、経済的にも恵まれて、やりがいがある」、といったようなものでしょうか。また、「権威があり、特別な知識があって、人の役に立つ」、などというようなものでしょうか。
「特別な資格を持っている人間」
歯科医師は現在、過剰といわれるくらいの人数がいます。一般の方々は特別な資格と思うかも知れませんが、歯科医師側から見ると、ただ歯科医師というだけでいいのなら、代わりはいくらでもいるという状況です。
こんな質問はどうでしょう。
たとえば、数千万円のお金と10年間の特別な訓練で、かつてからなりたかったプロ・サッカー選手になれるとします。でも、もし、ずっと二流といわれ、控えで試合に出られないとしたら、それでもプロ・サッカー選手になりたいですか?
中にはサッカーが好きだからそれでもいいという人もいると思いますが、ずっと試合に出られないのが分かっていたら、プロ・サッカー選手にはならないという人もいると思います。なりたいのは、下手だとか使い物にならないとか言われる「ただの」プロ・サッカー選手ではなくて、試合に出られる、みんなから憧れる「一流の」プロ・サッカー選手ですよね。そのためにはどんな条件が必要なのでしょうか、どうしたら良いのでしょうか。
おそらく ***** さんは、歯科医師になること自体が目的ではなく、その中での生き方や環境や周りの人の評価などが、 ***** さんの気持ちを満足させるものだから歯科医師になりたいのだと思いますが、いかがでしょうか。
「多くの人に喜ばれるやりがいのある仕事」
それは捕らえ方、かかわり方だと思います。
「人の役に立っていてやりがいがある、面白い」
という目で見ればそういう風にも見ることができますし、そういう風にかかわることもできますし、そう感じることができます。
また、
「毎日同じ作業ばかりやっていて面白くない」
という目で見れば歯科の現場もそういう風に見ることもできますし、そういう風にかかわることもできますし、そう感じることができます。
これは何も歯科に限ったことではなく、多くの職業でも同じようなことがいえるのではないでしょうか。
もし歯科医師になって治療を行う場合、 ***** さんは治療を行う人としてその患者さんにとっては特別な人になります。とてもやりがいがあります。喜ばれますし、達成感もあります。
これは、お店で接客している店員さんが、目の前にいるお客さんにとっては特別な存在であるのと同じような状況です。
そのお客さんに対応するという特別な人間として、今、他の人にはできない立場にいて、目の前のお客さんを喜ばせることも、役に立つこともできます。嫌な気持ちにさせる事だって、怒らせることだってできます。
少しでも役に立とうと思って、商品のことや、その使い方や、メリットやデメリット、その克服法、さらにお客さんの話を聞く方法、分かりやすい説明の仕方、立ち居振る舞いの仕方、などなど、勉強することはいくらでもあります。専門性を持つことができます。成長しているという実感も得られます。達成感も得られます。特別という意味では、この店員さんも特別な仕事をしている訳です。
何も歯科医だけが特別な仕事をしているわけではありません。
余計なお世話だとは思いますが、一度 ***** さんが抱いていらっしゃる歯科医師になったら感じてみたい気持ちをできるだけ多く言葉に書き出してみてください。
例えば、専門性、人の役に立てる、喜ばれる、‥‥‥‥‥、など
そしてそれを、現在の職場や、家族関係や、友人関係や、趣味の関係や、地域のコミュニティーなど、さまざまな人とのかかわりの中で実現させる方法はないのかを考えて見てください。もしかすると ***** さんが望んでいるような生き方が、すぐにでもできるかも知れません。
歯科の世界を目指される場合
周りに目標となる尊敬できる歯科医師はいらっしゃいますでしょうか?
もしいらっしゃれば、その方に色々伺ってみてください。
ただ漠然と歯科業界を目指されるなら、先ず歯科業界全体の動向、その中で ***** さんがどんな役割を担おうとしているのか、どんな生き方をしたいのかを、じっくり検討させることをお勧めします。きっと37年の人生経験を踏まえ、18歳の高校生とは違う立場で想像できることと思います。
1人前の歯科医師になるには、私立大学に行かれるとすると数千万円のお金と最低でも10年という時間がかかります。
もし、今の地位と収入を捨て、歯科の世界に飛び込まれるのでしたらはっきりした指針と覚悟をもって飛び込まれることをお勧めします。
どちらにしても、今の世界で生きようとも、歯科の世界に飛び込まれようとも、 ***** さんには、是非、一流を目指して生きていっていただきたいものと思います。
(歯のQ&Aサイト歯チャンネルにて回答したものを一部修正いたしました)
マツモト歯科医院 東京都大田区千鳥1-10-5、電話:03-5700-1444 院長 松本 理(まつもと わたる)1954年(昭和29年)神奈川県川崎市生まれ、1977年東京都立大学理学部数学科卒業、
1979年東京医科歯科大学歯学部付属歯科技工士学校卒業、1986年大阪大学歯学部卒業、1989年(平成元年)8月マツモト歯科医院開設