目指す医療、目指す歯科医師像

「医療者として信頼される」が目標です



私たちは今の社会の中で様々な役割を担っています。職業人であると同時に、夫や妻であったり、親であったり、親に対しては子であったり、誰かの親しい友人であったり、何かのサークルやコミュニティーの一員であったりします。歯科医師の立場だとしても、実際に治療を行う治療者であったり、管理者であったり、管理される側であったり、経営者であったりします。また他科の治療を受ける時には患者役にもなります。

「歯科医師」には様々な側面がある訳ですが、わたくしは、歯科医師として患者さんの治療に携わるのであれば、それでも先ずは何より患者さんから「医療者として信頼される」ことが、最も大切だと思っています。

とは言ってもあまりに抽象的ですよね。

それでは、患者さんから「医療者として信頼される」とはどういうことでしょうか、そもそもどんな種類の信頼があるのでしょうか。また、どうしたらその場だけでなく長期間にわたり信頼を得られ続けるのでしょうか。



治療が一定水準以上のレベルで行われれば、治療の成功率はいつも 0%から100%の間です。特に腕に自信のある歯科医師でしたら100%の方に近いかもしれませんね。でも普通は0%ということもないし100%ということもありません。

見届ける期間が長ければ長いほど、思ってもみない事態に遭遇し、成功率は落ちていきます。実際、充分配慮して定型的な処置ができたとしても結果が良くないこともあります。逆に、もうだめかなと思って応急処置程度の事しかしなくても、思いがけず結果が良いこともあります。なかなか机上での予想通りというわけにはいきません。

結果が良ければ信頼を損なうことは少ないと思いますが、長期にわたり患者さんから信頼が得られるようにと考えると、結果が良くなくても信頼が失われないような、そういう種類の信頼でなければなりません。

良く話を聞いてくれる、困ったときに何とかしてくれる、など、状況に応じて信頼のもとになる項目は異なってきます。勿論、「神の手」(=高い技術力)も信頼が得られるための大事な項目になります。真摯、一所懸命、ささいなことでも約束を守る、なども医療者としてはもとより、人として信頼されるために大切なことです。



現在私たちは多くの専門家集団に支えられています。電気のことでは電気屋さん、ガスのことではガス屋さん、法律の事は弁護士だったり、タクシードライバーや、皆さんそれぞれの分野の専門家です。おのおのが専門家としての知識や技術を持ち、経験を積み重ね、それぞれの倫理観に基づいて仕事をされ、そして信頼され、社会が成り立っています。高い倫理観が必要であるという事についても、どの職業でも同じで、医療だけが特殊ということはありません。

例えば、ガス給湯器が故障したとしましょう。普通は自分では直せませんから、専門家であるガス屋さんにお願いして対応してもらいます。もし、簡単な修理で解決するのに機械ごと交換しなければ直らないと言われれば、結果的に直ったとしても必要以上にお金を取られることになり、経済的損害を被ります。勿論、修理で対応できずに機械ごと交換しなければいけない場合もあるでしょう。その判断は素人である私たちにはできませんので専門家に任せるしかありませんね。また工事後はちゃんと機能してもらわなければなりませんし、後でガス漏れや水漏れが起きても困りますから、工事はきちんとしてもらわなければなりません。

倫理観、知識、一定水準以上の技術が必要なことでは歯科医療と同じです。また約束の日時に来てくれるとか、片づけをきちんとしてくれるとか、電話にすぐ出てくれるとか、本業の知識・技術以外にもクリアして欲しいことは多々あります。

また、飛行機のパイロットなどは、ちょっとしたミスが多くの人の命を失わせる重大な事故につながってしまいますので、とても責任の重い仕事です。

医療だけが人の命にかかわっている訳でもありません。



それでは、歯科医師が医療者として信頼されるためにはどんな要望に応えたらよいでしょうか。どうであったら良いのでしょうか。特に現在のようにインターネットを通じて様々な情報が入手できる世の中にあっては、こと知識に関しては患者さんの方がよく知っているということすら起こります。


私は歯科医師が医療者として長期にわたって信頼され続けるためには以下のようなことが必要と考えています



、適切な診断


今どういう状態にあるのか、何が起きているのか、原因は何なのか、将来どうなっていくと思われるかについて、その都度十分時間をかけ必要な検査をしよく検討する。これが適切でないとふさわしい治療方針は立てられません。単に症状の解決のみに注目せず、できるだけおおもとの原因を解決することを考えて対策を立てて、今後再発したりさらに悪化したりしないよう、また他に悪影響が及んだりしないよう配慮することが大切です。患者さんが他院にセカンドオピニオン、サードオピニオンを求めても充分納得できる、同業者が見ても納得できるレベルを目指します。



、患者さんの話が素直に聞ける。質問には真正面から患者さんが理解できるように答える。分からない事は分からないと言える。


価値観は人それぞれですので、その方その方にあった治療方針を考えねばなりません。かってな思い込みを排して、患者さんの話が素直に聞ける、患者さんの思いをそのまま受け止められるということは大切なことです。また、質問に真正面から答えないことは、信頼を損なう事にもつながります。「自分のことを分かってくれる」 「話がわかりやすい」と感じていただくことは長期に信頼を維持していく上でとても大切です。

また、知らないことについては知らない、分からないことは分からないと素直に認めておくことは大切です。必要であれば後で調べ患者さんに報告すればより良いと思います。中途半端な知識で中途半端に答えることは信頼を損ねるもとになりますし、正しい選択の障害となることもあります。正直で真摯な対応は将来にわたり患者さんと信頼関係を継続させることにつながります。



、患者さんの価値観にあった適切な治療方針、治療順序を考えてあげられる。


同じような状態でも、普通、治療の選択肢はいくつもあります。材料の選択のみに留まらず、削るか削らないか、神経を取るかとらないか、歯を抜くか抜かないか、歯を入れるか入れないか、歯を入れる場合にはその方法(義歯、ブリッジ、インプラント、歯牙移植、その他)、さまざまです。よく「どの治療を選びますか」などと言われる歯科医師もいらっしゃるようですが、患者さんはそれぞれの「治療」を望んでいるのではなく、治療によって得られる「結果」を望んでいますので、どういう「結果」を望むかを確認しておかなければなりません。また5年後、10年後、20年後どのようになっていたいかも、話し合いの中で十分に確かめておく必要があります。

同じ結果が得られるなら、早いほうが良い、安いほうが良い、痛くないほうが良いとなりますが、結果そのものが違うなら、「早い・安い」よりも「望む結果」が得られる方が良いと答える方は多いものです。

時に、治療方針を決めるというのは、とても責任が重く迷うことも多いのですけれど、患者さんの価値観を理解した上で「迷うことを引き受ける」というのも大切な私たちの役割の一つです。



、適切な処置


自分のできることと、できないことの区別がついていること

できることについてはその時代その時代の一定水準の処置ができること。できないことは、できる人を探し、できる人に任せること。

必ずしも全てを一人でできる必要はありません。専門性の高い事柄は相応しい人に任せればよいと思います。ただ「技術は外注できます」が「ポリシーは外注するのは難しい」ので、ただ任せればよいということはありません。患者さんの望む結果になるよう、出向いたり、立ち会ったり、時間と手間を惜しまず綿密な連携をして、治療に当たってポリシーを伝えていく努力をします。



、最後まで見届け、責任を取ること


どんなに優秀で知識も技術もあったとしても、結果を見届けなければ診断や治療方針、処置が良かったかどうかは判断できません。5年、10年、20年、と経過を見届け、予想外の事態が起きてもそれを解決しようと努力することが大切です。



後戻りできない治療の連続の中で、納得できる医療を行っていくには、患者さんの思いをくみ取った治療順序を考え、それを実践していくということはとても大切なことです。それは、たとえそれで結果が悪くても、納得のいく治療が受けられたという満足感が得られますから、それは信頼へとつながり充分患者さんに対して貢献していると思います。能率が良いことだけが善ではありませんね。

「どうせ抜けてくるんなら今抜いちゃえ」ではなく、持たないかもしれないけどできるだけの事はやってみようとして試みることが、思いもかけず良い結果につながったりします。

そして、その治療レベルはその時点その時点で一定レベル以上の堅実なものであることが大切です。そうでないと結果が良くない時に何が問題だったのか、もともと治療方針が良くなかったのか、治療方針は良かったけど処置自体が良くなかったのか分からなくなってしまいます。



患者さんにとっては、成功確率が低くても受けてみたい治療もあれば、成功確率が高くても受けたくない治療もあります。先ずご自分の歯が使える、ご自分の歯が長持ちする治療を試みる、それでだめなら次の治療へというのが自然の流れだと思っています。


幸い当医院では、患者さんの望む治療を行って、かかっただけ負担していただくという形をとっていますので、どんな治療法を選んだとしても当医院にとって経済的に成り立たないという事はありません。



どういう要望、ニーズに応えていくか。安い、早い、近い、年中無休24時間診療、などという要望もありますし、技術力が高い、親身、丁寧などという要望もあるかと思います。そのすべてに応えることも難しいので、どれかを選びそのどこかに重点を置くことになります。




医院の位置づけとポリシー


当医院は、先ず、患者さんが困っていることを伺い相談に乗り、それを解決しようとして努力する、そういう診療所です。そして患者さんにはよく知っていれば選ぶであろう治療を選んでいただき、望む結果になるよう精一杯努力していきたいと考えています。

勿論できることとできないことがありますので、自分でできることは自分でやり、自分でできないことはできる人を探し紹介し治療していただき見届けていくという形を取っています。

具体的に現在やっていることは、
検査、診断、保存修復、根管治療、冠橋義歯、部分床義歯、総義歯、抜歯、歯周処置、メインテナンス、MTM、などです。

紹介してやっていただいていることは、
歯列矯正、インプラント処置、口腔外科関連(粘膜疾患、腫瘍、難しい抜歯、他)、小児歯科、ペインクリニックなどです。

紹介先での処置に立ち会わせていただくこともよくあります。そうした立会いは、患者さんにとりましては当医院のポリシーの元で各分野の専門医の治療を受けられるというメリットがあります。



医院の研鑽システム


当医院では、先ず患者さんがいて、その患者さんに良い結果が得られるよう、日々研鑽を積んでいきたいと考えています。先ず課題がありそれを解決しようと調べ・聞き、自らを訓練し患者さんに還元していきます。具体的には、本、雑誌、ネットで調べる、できる人に聞く、見に行く、聞きに行く、患者さんを紹介し処置に立ち会うことなどです。良い技術や治療法などは、自らを訓練し習得・導入していきます。

実際、その患者さんの事を考える時間が長ければ長いほど色々なアイデアや解決策、今後取り組まなければいけない課題など多く出てきますので、そういうことを一つずつクリアしながら知識と経験と技術を積み重ねていきます。



一般的な知識を得る機会も積極的に作り、書籍、セミナー、知人、学会などから情報を得ていきます。また、材料や機械の疑問点などはメーカーやメーカーの開発者へ直接問い合わせするなどして解決して行きます。

特に、新規技術や新規材料は玉石混交のため十分な吟味が必要な場合も多いので、実際により長期に見届けている先人から貴重な経験を教えていただいたり、文献を調べたりしながら、導入するかどうかを慎重に判断していきます。


医院での1日


朝はその日の患者さんの資料に目を通すことから始まります。その日予定している治療を確認し、調べたり、準備したりイメージトレーニングし、実際に備えます。

診療中は、今治療している患者さんに対して、少しでも良い結果が得られるよう精いっぱいのことを行います。なかなか予定通りには行かず、予想外のことが次々と起こってくるのが普通です。予定の所まで終わらせることにこだわらず、10年後20年後の将来を考えながらそれら一つずつに対処していきます。

昼休みは1時間30分ですが、午前の患者さんの治療後の作業や、午後の患者さんの準備などもありますので実質1時間です。昼食、気分転換、休憩に使用します。

診療が終わればその日1日の記録に目を通し、画像・動画などを整理し記録、行ってきたことの確認、反省、次への準備、自らへの訓練を行います。また、取り組んでいる継続的な課題があれがそれらをこなしていきます。


マツモト歯科医院 東京都大田区千鳥1-10-5、電話:03-5700-1444  院長 松本 理(まつもと わたる)1954年(昭和29年)神奈川県川崎市生まれ、1977年東京都立大学理学部数学科卒業、 1979年東京医科歯科大学歯学部付属歯科技工士学校卒業、1986年大阪大学歯学部卒業、1989年(平成元年)8月マツモト歯科医院開設