治療の実際 10、歯科医院を開設するにあたって


 1980年頃アメリカで発表された論文によりますと

『アメリカ人の死亡原因の50%はライフスタイルの間違いによるもの、20%が環境の悪さによるもの、20%が遺伝によるもの、わずか10%が医療の不備によるもの』

だそうです。

 今まで医療はこの10%を相手にそれが100%だとして奮闘していたのかも知れません。
 

 一人の人間について考えてみましても、普通は病気の時だけ医者とかかわりになりますが、ある程度治ってしまうと医者から遠ざかってしまいます。この人にとっては医療とかかわりになっている時間は生涯全体から見ればわずかなものです。しかし、アメリカの報告では、その病気に至った原因の中で、ライフスタイルの誤り、つまり日常生活の中にある問題点が重要であることを示唆しています。死に至るほどの病ですらそうなのです。


 医療はどこに目を向ければ良いのでしょうか。


 患者は何らかの自覚症状が現れますと病院を訪れるようになります。自覚症状もかなり気をつけていなければ分からない軽いものから、がまんできないくらいひどいものまでさまざまな段階があります。病気によっても、初期のうちから激しい症状が出るものから、末期の死に至る直前まで症状が出ないものまでいろいろです。自覚症状は頼りになる時もあるし頼りにならない時もあるのです。

 ライフスタイルの誤りによって起こる病気はどちらだとお思いですか?


 最近は医療機関に対する新しい考え方も育ちつつあります。

 『病気を治すところ』から『人を健康の面から見守るところ』というふうに。


 病気を治すところと考えれば病気以外の時には関係がなくなってしまします。しかし、健康を見守るところと考えた場合はどうでしょうか。

 特に気になる自覚症状もなく日常生活を送るのに何の支障も無い人には、間違った方向に行かないように、時にはより健康を増進するようにアドバイスします。病気と呼ばれるような状態にまでなった人には、治療という行為を通じて、今よりもより良い健康状態になるよう手助けします。


 医者は何も全ての治療を一人でやる必要はありません。能力をこえるものについてはその分野の専門家に任せればいいのです。その判断は、変なプライドさえ捨てられれば素人である患者自身がするより正しいはずです。医者は他の医者を紹介することに何の恥もためらいも感じる必要はありません。主治医であるこの医者の仕事は患者の健康を見守ることにあるのですから。


 『早期発見、早期治療』分かっていてもなかなか実行できません。でもそれは病気になってしまった後の話です。ほんとうは病気にならない方法があるのならそれを身につけたいものです。

 まあ、気軽に健診でも受けてみてください。何か面白い話でも聞けるかも知れません。


1989年10月 マツモト歯科医院 松本理